医学、医療関連の翻訳、校閲、原稿作成に関連した内容、医学雑誌を読んでいて感じたことなどを書いていきます。原稿校正、書き直し代行、翻訳などの依頼はホームページの問い合わせフォームからお願いします。英語の他に和訳はドイツ語、フランス語、スペイン語(独和、仏和、西和)でも私自身がしています。
フランスのニュースサイトfranceinfoで医療・保健分野の頁を読んでいると、マンモグラフィーによる乳癌検診の効果を疑問視する団体についての記事がありました。検診により過剰診断、過剰治療につながるという主張がされているようです。
今回の記事に限らず、このようなことは癌検診の有効性について議論されるときには必ず出てきています。例えば、もともとおとなしい性格の癌だからこそ、癌検診で見つかるという考えがあります。なぜなら急速に進行する癌ならば、次の検診の前に症状が出て病院を受診することなります。進行が遅い癌でしかも早期の小さい癌では、そして高齢者の場合などでは他の原因で死亡するかもしれません。癌と診断されたために、癌に対する不安を抱えて過ごす日々が長くなるだけかもしれません。
それ以外にも、癌ではない異常が見つかり、癌でないことを確かめるための検査が必要になることもあります。健康診断を受ける際には、長所とともにその欠点についても理解の上で受けましょう。
日経メディカルの2017年 4月号を読んでいると、近年ではびまん性汎細気管支炎の新規発症は稀になってきているとの記述がありました。わずか数十年で日本人の体質が遺伝子レベルで変化するとは思えないので環境要因が関与していると想像しますが、具体的な要因となると全く分かりません。
びまん性汎細気管支炎については、「マクロライド系抗菌薬が有効で、抗菌作用以外の機序によるようだ」ということが知られるようになったときにも驚きましたが、今回も発症頻度の変化に驚きました。
乳児肥厚性幽門狭窄症は文字通り、乳児期に胃の出口である幽門部分が分厚くなり、内容物の通過障害を起こす病気です。私が最初のこの病気について知ったのは、中学生の頃に家庭用医学書を読んでいた時です。その後、看護専門学校在学中に、手術をしない保存治療の試みもされていることを知り若干驚きました。その後、胃の X線造影写真で診断されていた時代から腹部超音波検査でも病変部位を描出される時代となり、感動しました。今度は、短波放送の医学専門番組を聞いていて、乳児へのマクロライド系抗菌薬投与が発症誘因になり得るとの話を聞き、今回も医学の進歩や時代の変化に驚きました。
私の購読している英文医学雑誌New England Journal of Medicine には Images in Clinical Medicineというページがあります。2017年4月20日号では食道ガンジタ症の内視鏡写真が掲載されていました。AIDSの患者だろうかと読み進めると、びまん性汎細気管支炎でマクロライド系抗菌薬を使っている症例でした。解説文を読み終えてから、こういう疾患と治療の組み合わせからみて日本からの投稿ではないかと思いました。著者名、所属を見るとやはり日本からのものでした。
興味のある方は年間購読者でなくても、上記雑誌のホームページで写真および解説がみられます。