医学、医療関連の翻訳、校閲、原稿作成に関連した内容、医学雑誌を読んでいて感じたことなどを書いていきます。原稿校正、書き直し代行、翻訳などの依頼はホームページの問い合わせフォームからお願いします。英語の他に和訳はドイツ語、フランス語、スペイン語(独和、仏和、西和)でも私自身がしています。
新聞の第一面に糖尿病患者やその疑い例が1000万人を超えるとの記事がありました。高齢者の増加が背景にあるらしいですが、高齢者ではどのように治療するのか、実際に診療する先生たちには悩ましいところでしょう。高齢者では若い人に比べれば当然ながら残りの寿命は少なくなります。糖尿病の合併症が出てくる前に、他の病気や事故で死亡する確率の方が高いかもしれません。高血糖の程度にもよるでしょうが、どの程度積極的に治療するのか、第一線で診療にあたる先生は悩むと思われます。
治療をするにしても悩ましい問題があります。高齢者では食事や運動などその人なりの生活習慣は定着していて、その修正は難しいかもしれません。運動と言っても、膝が悪い、体力の衰えなどで若い人のようには運動はできる人ばかりではありません。また既に他の病気で薬を何種類も薬を飲んでいる人に、更に別の薬を使うとなると、患者の費用負担増加や薬物相互作用、副作用などの問題が出てくる懸念もあります。現場の先生たちの苦労が想像されます。
私が購読しているNew England Journal of Medicineの2017年9月14日号(Vol. 377, No.11)には、心臓の卵円孔開存例に対する治療によって脳梗塞の発生頻度が減るかどうかの研究が 三つ掲載されていました。そのうちの二件の研究では、患者背景を記した表の中でmedical history、ここでは既往症もしくは併存疾患と思われますが、そのような疾患として片頭痛の項目がありました。それによると片頭痛の合併頻度は概ね3~4割でした。
以前に、片頭痛患者の中に卵円孔開存が多い可能性があることは経食道心エコー検査に関する本で読んだことはありました。ですが、ここまで卵円孔開存と片頭痛の合併は多いのかと少々驚きました。ただ今回の研究の対象は既に脳梗塞を起こした患者で、更に脳梗塞の原因として明確な他の疾患がないという対象の偏りはあるかもしれません。
ちなみに卵円孔は胎児期には開いていて右心房から左心房に血流が流れています。出生後には閉じて多くの場合やがて心房中隔として完全な一枚の壁になります。しかし一部の人ではそうならず、いわゆる奇異性脳塞栓症の原因となることがあります。一方、片頭痛の方ですが、こちらも患者の数はけっこう多いです。今まで私の身近にも片頭痛もしはくその疑いのあるの人はときどきいました。