医学、医療関連の翻訳、校閲、原稿作成に関連した内容、医学雑誌を読んでいて感じたことなどを書いていきます。原稿校正、書き直し代行、翻訳などの依頼はホームページの問い合わせフォームからお願いします。英語の他に和訳はドイツ語、フランス語、スペイン語(独和、仏和、西和)でも私自身がしています。
遺伝関連学会の提唱により、優性遺伝、劣性遺伝というときの「優性」「劣性」はそれぞれ「顕性」「潜性」となりました。それ以外にも色覚異常は「色覚多様性」になるなどの変更がされました。遺伝領域以外でも「痴呆」が「認知症」、「精神分裂病」が「統合失調症」になるなど、今までにも変更例はあります。以前の用語には差別的要素がある、語感が悪いなどの理由があるようです。ただ個人的には慣れ親しんだ用語なので、無理に名称を変更をしなくてもよいのではと感じることはあります。しかし専門用語に限らず言語は時代とともに変化していくので、今回の変更も時代の流れなのかもしれません。
最近は法律の規制に反して臍帯血を用いた医療行為、それも科学的根拠の乏しい医療行為についてのマスコミ報道をよくみます。刑事事件にまで発展しています。これをみていて私の頭に二つのことが浮かびました。一つはだいぶ前の話ですが社会問題になった、アトピー性皮膚炎に対するいわゆる「アトピービジネス」です。科学的根拠のない治療法が民間だけでなく医師によっても行われていて、病状が悪化した例が多くあったというものです。もう一つは最近医学雑誌で読んだ文言で「保険診療は科学的裏付けのある最も確かな治療である」というものです。
病状のよくない患者がより効果が高い治療を大金を支払ってまで求める心情は理解できます。医師の側も何とかよくしてあげたいと思うでしょう。しかし、患者も医師も常に冷静な判断をするようにしましょう。患者にしてみれば大金と手間をつぎ込んで病状がよくならないとしたら、大変な不幸です。医師の側も経営上の利益を考えての場合もあれば、判断力を失って本当に効くと思い込んで科学的根拠のない治療をしてしまう場合はあるかもしれません。患者も医師も嫌な思いをする危険が高まります。保険診療の範囲内で出来る限りのことはしてみる、先進医療などある程度の信頼性は確保されている方法を考えるなど、冷静な判断をしましょう。