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フリーランス医学書校閲者・医療翻訳者日誌

医学、医療関連の翻訳、校閲、原稿作成に関連した内容、医学雑誌を読んでいて感じたことなどを書いていきます。原稿校正、書き直し代行、翻訳などの依頼はホームページの問い合わせフォームからお願いします。英語の他に和訳はドイツ語、フランス語、スペイン語(独和、仏和、西和)でも私自身がしています。

「逸話的な報告」という医学書内の文言

    内科の医学雑誌を読んでいると「…という逸話的な報告がある」という文言が目に入りました。日本人が日本語の世界内だけで作文をしていたら、医学書の原稿執筆でこのような表現は用いないでしょう。おそらくこれは英語の文献を参照して書いており、その引用文献では"anecdotal report"という表現が使われていたのだと思われます。英語の医学文献を日頃読んでいると、実際にはanecdotal reportは「症例報告」の意味で使われているらしいと分かりますが、日本語の辞書に依存しすぎると「逸話的報告」と書いて引用したくなっても不思議ではありません。
 ちなみに「逸話」の意味を国語辞典で調べると「まだよく知られていない興味深い話」という感じの説明がありました。まだよく知られていないが示唆に富む症例だから情報発信しようというのが症例報告ですから、逸話的な報告と言えないことはありません。
 英語の文献を参照して和文原稿を書く際に少し変わった日本語表現にしてしまった他の例としては「前炎症性」「下方制御」「腹部痙攣」などがあります。医学書の編集者や校正者が英語の医学論文まで読めるだけの知識を持って原稿の確認を行うのは難しいとは思いますが、「少し変わった表現だな」と思ったときには調べてみる慎重さが必要です。
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プロフィール

HN:
医学書校正者 & 医療翻訳者
性別:
男性
職業:
医学書編集・医療翻訳

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