医学書、医学雑誌を読んでいる時、あるいは校閲、校正作業を引き受けて原稿を読んでいる時、「肺梗塞」という用語に出くわすことがあります。しかし「肺梗塞」と書かれていても多くの場合は文脈から判断すると、下肢深部静脈血栓に続発する肺動脈の血栓、塞栓症の書き間違いです。医学書の編集者、校正者は「肺梗塞」という用語を見たときは、本当に肺梗塞を指しているのか注意して原稿を確認する必要があります。
このような書き間違いが起こる要因としては、おそらく動脈=酸素や栄養を送る血管なので、そこが詰まれば組織の壊死が生じるという意識があるのでしょう。その結果として、肺血栓塞栓→肺梗塞と無意識のうちに考えているのだと思われます。しかし肺動脈はガス交換、要するに呼吸に関与する機能血管で、肺動脈内には"静脈血"が流れています。これを念頭に置いて医学書編集者の皆様は、「肺梗塞」という三文字を見たときには原稿を確認しましょう。