女性芸能人の口腔がん記事を新聞で読みました。夏から口内炎として治療していたのが、実際には口腔がんだったとのことでした。記事を読むと既に頸部リンパ節への転移もあるようです。細かな診療経過は分かりませんがこの報道を読んでまず思ったのは、「初数週間治療した時点で、単なる口内炎にしては治りが悪いとは思わなかったのか」という点です。そう思った後ですぐ、外来で大勢の患者を診ている医師にしてみれば、いくらカルテの記述があるにしても患者全員について細かな状況を理解して的確な判断をするのは難しいかとも思いました。ここで大事になるのは患者側の判断力です。一般の人には例え難しい専門知識はないにしても、例えば「ただの口内炎にしてはおかしい」「ただのカゼにしてはおかしい」など、感じることはできます。症状の経過を一番よく知っているのは患者自身です。ありふれた病気にしてはおかしいと感じたら、遠慮せずに医師に話してみましょう。
ちなみに最初に頻度の高い良性疾患を疑い、その治療をしてみるのは決して悪くはありません。特に悪い病気を示唆する明確な症状もないのに、すべての患者で最初から悪い病気を疑って細かな検査をしていたら、医療を提供する側も受ける側も負担が大きすぎます。