翻訳会社は下請け翻訳者の登録可否について決める際、翻訳テスト、いわゆるトライアルを実施するのが通例です。一方、翻訳者の側からすれば、あらかじめ用意しておいた訳文見本を提出すればよいのではとの意見を持つ人がいます。確かにその通りです。私自身、取引先から有能な和訳翻訳者の紹介を頼まれ、翻訳者を自己サイト上で募集した時期がありますが、訳文見本で判断させてもらったことがあります。特に支障はありませんでした。
ではなぜ翻訳会社はトライアルにこだわるのでしょうか。その原因の一つは、翻訳会社内には翻訳者の翻訳能力を判断できる内勤の人がいない場合が多いことがあります。登録翻訳者に外注して応募者の訳文を採点してもらうには費用がかかります。翻訳会社にしてみれば自社が用意したテスト用原文と、登録翻訳者に書いてもらっておいた模範訳文を使って自社内だけで応募翻訳者の能力を判断したほうが簡単で安上がりです。登録翻訳者に応募者訳文を審査してもらう場合でも、毎回同じ原文ならば審査料支払いを安く設定できます。