最近はスポーツ選手に対する鉄剤投与、それも注射製剤の投与が一種のドーピングとして、そして身体的影響を問題視する記事を新聞でよく見かけます。医師であれば医学生時代や、卒後も医学雑誌などで、「鉄欠乏貧血は原則として経口鉄剤にて治療し、注射薬により治療する場面は限られる」と見聞きしているはずです。鉄沈着による障害を起こすクモクロマトーシスという病気についても、実際に見たことのある先生は少ないにしても知識としては知っているはずです。安易に鉄剤投与に協力する医師が多くいたことに驚きでした。
最近は購読している米国の医学雑誌で、サラセミアなど先天性溶血性貧血で輸血を繰り返し行う必要がある人に生じる鉄沈着の治療について取り上げれていました。日本ではこういった病気の患者が稀なことも過剰な鉄剤投与や鉄沈着についての意識が医師にも薄いことの背景にあるのかもしれません。