翻訳会社では下請けとなる登録翻訳者の募集を行う際に、翻訳テスト、いわゆるトライアルを行うことが多いです。実際に訳文を書かせて翻訳能力を判定します。私も数社から頼まれて応募者の訳文を審査した経験があります。私の場合、応募者に翻訳能力があるかだけならすぐに判定できます。しかし翻訳会社によっては応募者を一ヶ月、あるいはそれ以上待たせるところがあります。しかも特に問題のない訳文を書いて提出しても不合格で登録不可となることがあります。その背景を考えてみました。
審査に日数を要する理由の一つは、誰かに作ってもらった模範解答を基準にして社内勤務の人(非翻訳者や当該分野に素人の人)が採点しているという可能性です。模範解答だけが絶対的な正解ではないのですが、医療など専門的内容の場合には模範解答から少しでもずれた訳文は不適切と判断されてしまう可能性が疑われます。当該分野の知識がある人なら「これは許容範囲」と思える場合でも、専門教育を受けていない人にはしっかりと判断できないと思われます。また当該分野の専門家が訳文を見れば5~10分で採点できるのに長い間結果通知まで待たされるというのも、少なくとも一部の会社では上記のような審査体制だからだと私は疑っています。